私のテディベアに、私が溺愛されるまで
楓の柔らかな体が、自分の膝の上で微かに揺れる。
その体温が、肌越しにぐっと伝わる。

一朗の中で、何かが切れた。

「……知らねぇぞ」

低く、かすれた声で呟くと、今度は一朗が楓の顔をぐっと引き寄せた。

「ひゃっ……!」

短い悲鳴のような声を上げた楓の唇を、一朗が強く塞いだ。

それは、今までの遠慮がちなキスとはまるで違う。
重なった唇が、深く絡む。
楓は驚きで肩を震わせながらも、すぐに瞳をとろんと閉じた。

一朗の手が、楓の背中をするりと撫で降りる。
オフショルダーの柔らかな布を指でつまむと、片方の肩をさらりと落とした。

「……っ、一朗……」

唇が離れた楓が、潤んだ瞳で一朗を見上げる。

「官能的な純文学を……」

一朗の声は熱を帯び、途切れがちだった。

「……何百冊読んでも、目の前にお前がいて、こうして……求め合ってる方が……数百倍、官能的だ……」

楓は息を呑む。

「い、一朗……」

「俺、もう……ただの“お兄ちゃん”じゃいられないからな」

楓の頬を片手で包み、再び深いキスを落とす。

そして、もう片方の手は楓の腰を抱き寄せた。
ソファの上で、二人の影がひとつに溶け合う。

楓が小さく甘い声を洩らすたび、一朗の心臓が早鐘のように打ち鳴らされる。
けれど今度は、一朗はもう目を逸らさなかった。
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