私のテディベアに、私が溺愛されるまで

14★

食卓を片付け終えた頃には、すっかり夜も更けていた。

「ふぅ~、おなかいっぱい」

楓はソファにぽふんと腰を下ろし、クッションを抱きしめながら笑った。

一朗も自分の席に腰を下ろし、肩を回す。

「食いすぎただろ」

「だって、一朗のごはん美味しすぎるんだもん」

楓がクッションに頬をすりすりさせながら、一朗の方を見上げる。

「ねぇ……」

「ん?」

「もう、ボレロ、外してもいい?」

一朗は一瞬で言葉を失い、目を丸くする。

「は!? ダメ」

楓はぷくっと頬を膨らませた。

「だって、さっき“食事のときは着てろ”って言ったじゃん。もう食事終わったもん」

「……お前、ほんっとそういうとこずるいよな」

「ずるくないもん」

楓はふわりと立ち上がり、ゆっくりボレロを脱いだ。

一朗の目の前に現れたのは、再びオフショルダーの華奢な肩と鎖骨。

「……やっぱ着ろ」

一朗が顔を覆いながら言うと、楓は少し近づいてきて、一朗の手をそっとどけた。

「やだって言っても……一朗、ちゃんと見てくれないと」

「……見たくないわけじゃねぇけど……」

「じゃあ、見て?」

楓は小首を傾げながら、一朗の目を覗き込む。

「いろんな私、見てほしいって言ったじゃん」

一朗は口を開けかけて、結局閉じた。

そして、ふっとため息をつき、力なく笑う。

「……マジで、俺の理性試すのやめろ」

楓はにっこり笑って、一朗の肩にそっと寄りかかった。

「試してないもん。ただ……一朗の彼女でいたいだけだもん」

その甘い声に、一朗は再び黙り込み、頬を真っ赤に染めたまま、楓の頭をそっと撫でるしかなかった。

その優しい感触に、楓は目を細める。

でも、すぐに目を開けると、一朗をじっと見つめた。

「……ねぇ、一朗」

「ん?」

「私のこと、好き?」

一朗は、一瞬息を詰め、顔を真っ赤にして横を向いた。


その短い答えを見た、楓の瞳がきらりと光る。

「そっか……じゃあ、こうしたらどうする?」

楓はゆっくり身体を起こし、ソファに座る一朗の膝の上に、するりとまたがった。

「お、おい……っ!」

一朗が慌てて楓の肩を掴もうとするが、楓はその手をふわりとかわし、両手で一朗の頬を包む。

「だめ。逃げちゃ、やだ」

「楓……っ」

「ずっと言いたかったの。私ね……一朗に、もっと好きになってほしいの」

その声は甘く震えていて、けれど瞳は真剣そのものだった。

「私、もう妹扱いされたくない。だから——」

楓は一朗の顔に、ふわりと自分の顔を寄せると、何度も角度を変えながら短くキスを落とす。

「んっ……」

一朗は息を呑むように目を閉じた。

「ねぇ、一朗。触ってほしい」

「な……!」

「いろんな私を、見てほしいって言ったでしょ?」

楓の指先が、一朗の胸元をそっとなぞる。

「……俺……」

一朗の声はかすれていた。

「俺……理性が……」

「なくしても、いいんだよ?」

楓の甘い囁きに、一朗は完全に動きを止めた。

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