私のテディベアに、私が溺愛されるまで

【おまけ】溺愛受けた楓視点★

――気づいたら、朝だった。

まぶたを持ち上げると、淡い陽の光がカーテンの隙間から差し込んでいる。

昨夜、一朗の腕の中で何度もドキドキして、胸が苦しくなるほど「好き」と言いかけては飲み込んだ。
だって言ってしまったら、この関係が終わってしまいそうで。
それが、なんだか怖かった。

だけど――

(……すっごく、幸せだった)

あんなに一朗に触れられて、名前を何度も呼ばれて。
優しくて、でも熱くて、いつもとは全然違う声で甘やかされて。
思い出すだけで顔が熱くなる。

(やっぱり、一朗が好きだなぁ……)

そう思いながらベッドの上でうずくまっていたら、ふと、枕元にくしゃっと置かれたTシャツが目に入った。

それは、昨日一朗が着ていたもの。

そっと顔をうずめると、ふわっと石鹸と一朗の香りがして、胸の奥がぎゅうっと締めつけられた。

(……もう、私も彼女なんだから、いいよね)

思い切ってそれをかぶって、寝室のドアを開ける。

「……一朗」

声が、ちょっと震えてしまう。

ダイニングの方から、振り向いた一朗の顔が、あっという間に真っ赤になった。

「お前……な、なんでそれ着てんだよ!」

その反応が、すごく愛おしくて。

「だって……匂いが、一朗だから……落ち着くんだもん」

一朗が頭を抱える。

「……お前、ずるすぎだろー……」

クスクス笑いながら近づくと、テーブルの上にはきれいに盛り付けられた朝ごはんが並んでいた。

(……やっぱり、一朗って、すごく優しい)

その優しさが、昨夜もいっぱい注がれたのを思い出して、また顔が熱くなる。

「わー、美味しそう!」

「せめて、その格好のまま食うのやめろ……」

「やだー」

一朗の困った顔を見ていると、うれしくて仕方ない。

だって、一朗があんなふうに必死に私を欲しがってくれるなんて、ずっと夢みたいだと思っていたから。

「お前、ほんと……」

「ほんと?」

「……可愛すぎ」

その一言が、まるで甘いお菓子みたいに心に広がる。

(好きって言いたいけど……もう少し、じらしたいな)

楓はそっと笑いながら、一朗の指をぎゅっと握り返した。

今はただ、この溺愛の中に溶けていたかった。

朝ごはんを食べ終えたころ、一朗はコーヒーをすするようにしてため息をついた。
「……なぁ」

「なぁ、じゃないよ、楓だよ」

私は一朗の隣の椅子から、そっと身を寄せた。
昨日、一緒に眠って、一緒に目覚めて、朝ごはんを食べて。
それだけで、胸の中がぽかぽかと温かい。

「……楓」

「ん?」

「お前って、ほんと……反則」

「ふふ、また言ってる」

私はちょこんと一朗の肩に頭を乗せる。

「でも、一朗だってずるいよ?」

「俺が?」

「うん、だって……こんなに優しくされて、溺愛されて……好きって言えなくなっちゃう」

一朗の身体が、ぴくっとわずかに動く。

「……え、それって」

私は小さく笑って、一朗の膝の上に乗り換えた。
「つまり……好きってこと、だよ」

一朗は一瞬だけ目を見開いて、それから——
私をそっと抱き締める。

「……もう、ほんと無理。好きすぎる」

そのまま、深く抱きしめられた。

耳元で、一朗の心臓の音がどくどくと速くなる。
私の頬も自然と熱を帯びてくる。

「なぁ、楓」

「……ん?」

「今ここでキスしたら、たぶん俺もう、止まんない」

その言葉に、心臓が跳ねた。

私は唇をきゅっと引き結び、一朗の首に腕をまわした。

「……じゃあ、止まらなくていいように、またベッド戻る?」

一朗の目がぐらぐらと揺れ、でも次の瞬間、真っ直ぐに私を見つめてくる。

「……お前、ほんと……好きだわ」

「知ってる。私も」

私はそっと、自分からキスを落とした。
優しく、でも確かな熱を伝えるように。

そのキスに応えるように、一朗の腕が私を強く抱き寄せた。

朝陽が、カーテン越しに白くゆれている。
なのに、部屋の中は夜よりもずっと甘くて熱い。

今日はお休みの日。
もう少しだけ、二人きりの時間に溺れていたい。


一朗の唇にそっと触れた私のキスは、思ったよりずっと熱くて。

彼が私を強く抱きしめ返した瞬間、心臓が破裂しそうになった。

「……楓」

「……なに?」

一朗の低い声が、耳に直接落ちてくる。

「もうベッド行こう」

そのひとことが、胸の奥に甘い火を灯す。

私は少しだけ、いたずらっぽく笑った。

「……朝からいいの?」

「だめって言っても、止められねぇ」

顔がどんどん赤くなる私を見て、一朗はますます熱い目で見つめてくる。

「楓……ほんと、可愛くなったな」

「さっきも言ってた」

「足りない。何回でも言う」

そう言いながら、また唇を奪われる。
今度のキスは、昨夜よりも深くて甘い。

唇が離れた瞬間、一朗は少し息を荒げたまま、私の頬を指先で撫でた。

「……まだ、好きって言い足りないくらいだ」

「私もだよ」

恥ずかしくて目を逸らそうとしたら、一朗の手が私の顎をそっと持ち上げた。

「逃げんな」

「……逃げてない」

「じゃあ、ちゃんと目、見ろ」

真っ直ぐに見つめ合うと、なんだか胸がいっぱいで言葉が出なくなる。

「楓……全部、俺に預けて」

「……うん」

その返事を聞いた一朗は、私をひょいと抱き上げた。

「きゃっ……!」

「お姫様抱っこ、好きだろ」

「す、好きだけど……!」

「じゃあ、今日もいっぱい抱っこする」

一朗の部屋へ向かう廊下で、私は彼の首にしがみついた。

「……一朗」

「ん?」

「やっぱり好きって言うの、まだ恥ずかしいけど……」

「……うん」

「それでもね、今までで一番、幸せ」

一朗の歩みが止まり、私を見下ろす瞳がすごく優しくなる。

「俺もだ」

そしてドアを開けた瞬間——

「……楓、覚悟な」

一朗の声が、甘く低く落ちる。

私の頬が真っ赤になる。

「……やさしくしてよね」

「もちろん。全力で甘やかす」

そのままベッドへと連れて行かれた私は、彼の溺愛の中に、再びとろけていった。


終わり
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