私のテディベアに、私が溺愛されるまで
「いい加減、離れろ」

一朗が低く言うと、楓は背中にくっついたまま、きょとんとした声を出した。

「……なんで?」

その声が、くすぐったいくらいすぐ耳の後ろで響く。
次の瞬間、楓の腕がするりと一朗の腰に回り込む。
そして、ぎゅっと抱きしめてきた。

「お、おい! 楓!」

一朗の体がびくりと跳ねる。
背中いっぱいに、楓の体の柔らかさと、ほんのり甘い香りが押し寄せてくる。
特に、楓の胸の感触が、ありありと背中に伝わってきて、一朗の心臓は暴れそうだった。

「だって……」

楓の声が、すぐ耳元で甘えるように囁く。
吐息が耳たぶをかすめ、一朗は思わず目を閉じた。

「バカ……っ」

一朗は振りほどこうとするが、楓の抱きしめる力は意外に強い。

楓の頬が一朗の背中にぴたりとくっつき、さらに腕に力がこもる。
背中に押し当てられた楓の胸の感触が、ますますはっきりした。


「楓、いい加減にしろ……っ」

楓は、くすっと笑いながら、もっと強く一朗を抱きしめた。
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