女王陛下のお婿さま
 ファビオは、全部分かっていたのだ。アルベルティーナとクラウスが、お互いをどう想い合っていたのかを。始めこそファビオはクラウスに、アルベルティーナとの事を協力しろ、などと言っていたが、すぐに気が付いてしまった。

 そして何とか二人を良い方向へ進めるように、仕向けていたのだった。

 当の二人は全く気付いていなかったが……

 そんな状態だったので、結婚の準備も実はファビオは全くしていなかった。自国ナバルレテへ結婚報告の使いを出したと言っていたが、それも嘘だったのだ。

 アルベルティーナも、今回のような婚約式はファビオとはしていなかったので、ハレルヤの国民には結婚の事は公にはなっていなかった。

 だから、特に大きな問題にはならなくて済んだのだった。

「アルベルティーナ、お前は『諦めない達人』になる事を選んだんだな」

「はい! 一番大切な事は諦めちゃいけないって、諦めの達人さんが教えてくれましたから……ありがとうございました!」

 アルベルティーナはクラウスを見つめ、またファビオと視線を合わし微笑んだ。

「ああ、感謝の言葉は腐る程聞いた、もう止めてくれ。そんな事より……二人を見てたら俺も結婚したくなった。だから、可愛い姫でも紹介してくれると嬉しいんだがな」

 ファビオがそんな軽口を口にしたのと同時に、彼を呼ぶ大きな声が聞こえた。

「――ああっ! ファビオ王子様! こんな所にいたんですね!」

 声の主は、マイラだ。彼女は凄い速さで走り寄ると、がっちりとファビオの腕を捕まえた。

「マイラ……?! 何でお前が俺を探してるんだ」

「貴方の従者に頼まれて探していたんです! 少し目を離すとすぐに姿を眩ますって、ほとほと困っておられましたよ! 私が見つけたからには、もう逃がしません!」

「俺は別に逃げてはいないが……」

「問答無用です! さあ、大広間へ戻りますよ! アルベルティーナ様、クラウス様、そういう訳ですので失礼いたします!」

「ちょ、ちょっと待てマイラ! 俺はまだ……!」

「問答無用と言ったはずです!」

 口を挟む暇もなく、マイラはそう言うとファビオの腕をグイグイ引きながら、大広間の方へ去って行った。

 嵐のように現れて去っていくマイラと、それに引きずられるように連れて行かれるファビオの後姿を見送りながら、アルベルティーナとクラウスは同じ事を考えていた。

 ――あの二人、結構お似合いかも……

 お互いの考えが分かったのだろう、二人は目が合うと思わず吹き出して笑ってしまった。
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