女王陛下のお婿さま
 確かに、城の湯殿は湯浴み着を着て、男女一緒に入れるようになっている。アルベルティーナの父親もよく母親と一緒に広い浴槽でゆったりと湯浴みし、楽しんでいるのを知っていた。

 しかし、まだ会った事もない王子と入浴するなんて……。

「するわけ無いでしょ! 女王陛下がっ! 王子と一緒に湯浴みなんて!!」

 案の定、マイラが再び火を吹いた。クラウスに大股で詰め寄り、彼は彼で困り顔。

 アルベルティーナは……。

「――……ぷっ……! あははははは!」

 思わず吹き出してしまっていた。

 まだ会った事もないのに、女王陛下である自分を翻弄させるその傍若無人な態度、湯浴みに誘う大胆不敵さ。本当ならマイラみたいに怒るべき所なのだろうが、あまりの事に何だかアルベルティーナは可笑しくなってしまった。

 南国育ちだからここまでおおらかなんだろうか、それを思うとますます可笑しい。

「何だか、ここまでされると逆に清々しいわね。分かりました、私が湯殿へ参りましょう」

「ええっ?! アルベルティーナ様、まさか……!」

 驚いて声を上げたマイラに、アルベルティーナは楽しげに首を振った。

「大丈夫よ、マイラ。一緒に湯浴みをするつもりは無いわ。ただ、ファビオ王子のお顔を一度見ておこうと思って」

 これだけの事をしてくれた王子が、どんな顔をしているのか、少し興味がわいていた。

 ずっと食堂にいて様子を伺っていたシェフにアルベルティーナは、入浴しながらもファビオ王子が摘まめる食事を作るように指示を出す。そして湯殿へ向かった。

 マイラとクラウスも、あわててその後を追って行った。





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