女王陛下のお婿さま
 なんという男なんだろうか。振る舞いは大胆で強引に感じるが、意外と全て計算のうちなのかもしれない。アルベルティーナはそう感じた。

「さあマイラ、もう止めましょう。ファビオ王子の言い分も一理あるわ」

「アルベルティーナ様! そんな……!」

 まだ怒り心頭な様子のマイラだったが、アルベルティーナはにこりと微笑んでそれを制した。そして――

「ファビオ王子、侍女の失礼な態度をお詫び致します。」

 そう言って頭を下げた。

 女王が頭を下げた事でファビオも、先程までの勢いを静めるしかなかった。少しばつが悪そうに、無造作に伸びた紅蓮の髪をかき上げた。

「我が国と私の事も、お気に召して頂けて何よりです。ですが私は、今はまだ誰とも結婚する気はありません。お気の済むまで滞在して下さって結構ですが、婿入り先は他の場所でお探しくださいね」

 美しく微笑みながらキッパリと言い切ると、アルベルティーナはくるりと身体を翻す。その動きに合わせてドレスのスカートがふわりと揺れた。

 そしてそのまま、湯殿を出て行った。

 暫く呆然とアルベルティーナを見送っていたマイラだったが、ハッと我に返ると慌ててその後を追った。それに釣られたようにファビオは大きな声で笑いだす。そして側に控えていたクラウスの肩をグッと掴むと、さも面白そうに言った。

「可愛らしい顔してすっげえ肝の座った女王様だな! ますます気に入った! 暫くここに厄介になるぜ。戦略を考えないとな!」

「戦略、ですか……?」

「ああ、アルベルティーナ女王陛下を俺のものにする、その戦略だ!」

 どうやら、アルベルティーナの言動はファビオの狩猟欲に火を付けてしまったようだ。この男は、手に入れたいと思ったら必ず手に入れる、そんな強引さがある。

 肩を掴まれた力強さに、クラウスもそれを感じ取っていた。そして、アルベルティーナの事が心配だった。





< 22 / 110 >

この作品をシェア

pagetop