女王陛下のお婿さま
04二人目の王子さま
――同じだと思っていた。
子供の頃からずっと一緒で、お互いが相手を大切に想っている気持ちは同じだと。少なくともアルベルティーナは、ずっと同じままでいたつもりだった。でも……
そうではなかったのだろうか。自分では気がつかないうちに変わってしまったんだろうか。
クラウスも……変わってしまったんだろうか……
どんなに心が辛くても、女王としての仕事は待ってはくれない。湖に落ちて休めたのはたった一日。三日もするともう、アルベルティーナは重要な公務に出ていた。
それは父親クリストフの代から進めていた、隣国の併合である。
ハレルヤ王国の西側に位置する隣国ヘーメルは、ハレルヤの都市二つ分ほどの規模の小さな国だ。国の大半が農地で、緑溢れる領土で作られる農作物の輸出で国益を上げていた。
しかし近年、その農業にも輸出にも陰りが訪れていた。どんなに頑張っても領土の小さなへーメル国では大国の貿易力には敵わず、輸出の規模がどんどん縮小されてしまったのだ。
そのせいで、国の経済も破綻に向かっていた。
そこでヘーメルの国王がとった行動は、隣の大国ハレルヤ王国と併合する事だった。心優しい国王は、破綻して国民を道連れにするより、自国をハレルヤ王国に併合する事で、国民を守る方を選んだ。
併合すればハレルヤ王国の一部になる。破綻して国民が路頭に迷い、飢えて死ぬ事は無いのだ。
ハレルヤ王国にとっても、ヘーメル国独自の高い農業技術を利用する事が出来る。だから併合は、お互いにとって利益がある事だった。
今日はその調印式。実際に併合するのは一年後なのだが、両国共にその準備の期間が必要だからだ。
ヘーメル国王の希望で、調印は式典という形を取らず、ハレルヤ王国の城の一室で今日静かに行われた。