女王陛下のお婿さま
ファビオはそれを笑い飛ばすと、背を洗っているクラウスの手を止めさせた。そして桶の湯で身体を流すと湯船へ入る。湯船の中央にある大きなお湯の噴水を背にし、中からクラウスへ身体を向け座った。
『まあ、それも面白そうだが、他国で戦争を仕掛ける程、俺も馬鹿じゃない』
『では、何故……?』
『その逆だ。止めるんだよ、戦争を』
――戦争を、止める……?
まさかルイが戦争を起こそうとしているのだろうか。それが本当なのか、クラウスには分からなかった。
だがファビオは、そんな事で嘘をつくような男ではない。軍事大国の王子で、独自の情報収集に長けている事も知っている。もしかしたら何か情報を掴んでいるのかもしれない。
『……アルベルティーナ女王は、この事を知っているのですか?』
『いや、言ってない。言ったとしても立場上、他国の軍を入国なんてさせられないだろ』
確かにそうだ。それに、もし本当にそんな事態なら、ファビオの軍では無く自国の軍を使うだろう。ハレルヤ王国にも屈強な軍があるのだから。
クラウスは、湯に浸かりながら自分を見つめるファビオを見つめ返す。顔には笑みを浮かべているが、彼の獅子のような金色の瞳は獲物を見つけた獣のように鋭い光を放っていた。
『この国の軍が動けば、騒ぎが大きくなってしまう。だから俺はその前に止めたいんだ』
『……分かりました。私はどう動いたらいいですか?』
◇