女王陛下のお婿さま
 解放されていた大広間の扉が、大きな音をたてて閉められた。突然起きた異変に音楽は止み、舞踏会に来ていた人々が動揺してざわつき始める。

 その騒ぎを切り裂く野太い声が響いた。

「――静まれ! 我らはヘーメル国ルイ王子付き小隊である! この会場は我らが制圧した! 逆らう者は切り捨てる!!」

 声を合図に、広間に分散していた数人の男たちがそれぞれに腰の剣を抜いた。正装用の飾太刀(かざりたち)だと思われていたそれは、真剣だったのだ。

 そのギラリとした輝きを目にした人々から、悲鳴が上がる。

 アルベルティーナやその両親を護衛する兵士たちは、舞踏会という事で皆広間へは入っておらず、扉の外で警備をしていた。その入り口を閉められてしまい、為す術がない。

 中にいる男女は舞踏会用に着飾った、丸腰の者ばかりだった。

 何人かの兵士が素早く動き、クリストフとエメリナ、ファビオの喉元に剣を突きつけた。それでもう、誰も動く事は出来なくなってしまったのだった。

「……お前たちの目的は何だ」

 喉元の剣を煩わしそうに睨み付けながら、クリストフの隣に立っていたファビオが言った。答えたのは、最初に声を上げた男。

「我らは、ハレルヤ王国との併合に反対する、ルイ王子に賛同した者たちだ! 我らの声に耳を傾けない横暴な国王によって調印が済んでしまった今、もはやヘーメル国が存続するにはハレルヤ王国の国王を退かせ、ルイ王子を国王に即位させるしかない!」

 男はそこまで言うと、持っていた剣を高く掲げた。

「我々はルイ王子を国王にすべく、ここに革命を宣言する!」

 男の声に共鳴するかのように、他の兵士たちも声を上げる。興奮した数名の者が、花が生けられていた大きな花瓶を剣で叩き割り、それに怯えた女性たちがまた叫び震えた。

 さっきまで華やかで皆が楽しんでいた大広間は、今は緊張に包まれていた。
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