女王陛下のお婿さま
 それは体内へ徐々に蓄積されてゆく毒だとルイは言う。少量でも摂取し続ければ、早ければ二日ほどで今のアルベルティーナのように、体の自由がきかなくなる。

「でも、不思議なんですよ。僕が蜂蜜酒を差し上げてから、貴方は毎晩それを飲んでいたと聞いていますが……どうして毒は効かなかったのでしょう?」

 確かに。ルイから蜂蜜酒を貰ったのは、もう五日以上も前だ。そして毎晩寝る前には飲んでいた。それなのに何故なにも起こらなかったのだろう? それはアルベルティーナにも分からなかった。

「仕方が無いので今夜の蜂蜜酒には、特別にたっぷりと入れさせてもらいましたよ。よく効くように」

 それがマイラの持ってきた蜂蜜酒……

 濃度が高いその蜂蜜酒が引き金となり、今までアルベルティーナの体内に蓄積されていた毒が動き始めてしまったのだ。

 アルベルティーナは背筋がゾッとした。それは体調不良のせいではない。ルイの周到な計画が恐ろしかった。

 だが、震える体にグッと力を入れてルイを睨み付ける。

「私を殺しても……この国の王位は手に入らないわ……!」

「……そうですね。ですから、貴方の口から約束が欲しいのです。そしてこの誓約書にサインを」

 言いながらルイは懐から紙片を取り出した。

「そんな事……!」

 そんなサインなんてするわけがない。アルベルティーナがそう言おうとした瞬間、隣の大広間からまた悲鳴が上がった。

「……おや、また隣で何かあったようですよ」

 ルイは大広間の様子を見る様に立ち上がり、クルリと長椅子の彼女へ向かい合う。そして腰に挿していた剣を抜いた。やはり彼の剣も飾太刀ではなく、真剣だったのだ。

 切っ先をアルベルティーナへ向けると、剣はギラリと冷たく光を反射させた。

「ご存知ですよね? 隣の大広間には貴方のご両親とナバルレテのファビオ王子、それに、大勢の招待客がいる事を……その方たちを、一人ずつ殺していっても良いのですよ?」

 そんな事は絶対にさせたくない。アルベルティーナは体に力を入れて立ち上がろうとしたが、毒のせいで思う様に動かない。ハアハアと苦しい息の下、唇を噛み締めた。
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