女王陛下のお婿さま
 言われてみれば……併合の調印式の前、何度もヘーメル国王とは会って話し合いをしていたが、それには一度もルイの姿を見ることは無かった。

「ですが貴方にお会いして、そう簡単にはいかないと悟ったんです」

 ルイの他に大国ナバルレテの王子ファビオの存在に、頑なに結婚を拒否する女王陛下。そんな二人を見て、彼は別の計画を実行する事にした。

「――ところで女王陛下。蜂蜜酒はお気に召して頂けましたか?」

(蜂蜜酒?)

 突然どうしてそんな事を聞くのだろう。アルベルティーナはその唐突で場違いな問いかけの意味が分からなかった。

「あれは特別な酒なんですよ。ご存知でしたか?」

「え……?」

 ルイは頭に乗せていた王冠を手に取ると、クルクルと弄ぶ。そして手を止めると、にやりと笑いながらそれを床へ放り投げた。

 床に落ちた王冠はカランと冷たい金属音をたて、そのまま大理石の床を滑り部屋の隅へ行ってしまった。

「あの蜂蜜酒には、貴方を殺す毒が入っていたのですよ」

 ルイの衝撃的な告白に、アルベルティーナは息を飲む。そして全てに合点がいった。この動かない体の震えや痺れ、苦しさの全てに。

「じゃあ、さっきの蜂蜜酒は……」

「さきほどのだけではありません。貴方に差し上げた全ての蜂蜜酒には、毒を混ぜてあったのですよ」

 あの夜……ルイとファビオの三人で夕食を取った時にルイが部屋から持ってきた蜂蜜酒。あれは、偶然持っていたわけではなかったのだ。

 その夜の事を思い出し、アルベルティーナはハッとした。

「……まって、あの時、ファビオ王子も飲んだわ……!」

 ルイの言っている事が本当なら、ファビオにも毒が……

「ああ、それは問題ありません。即効性の毒ではありませんし、最初に貴方に差し上げたものは薄めてありましたから」
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