女王陛下のお婿さま
08届かない想い
 舞踏会の騒動の後、アルベルティーナは寝込んでしまった。ファビオの砂糖菓子で毒は中和されたのだが、完全にとはいかなかった。その毒の影響は残り、発熱してしまったのも無理はない。

 やっと起き上がれるようになったのは、三日目の朝だった。

 その日の午後、部屋へ訪れたのは、父クリストフとヘーメル国のヨハン。

 ヨハンの兄ルイはあの舞踏会の日に捕らえられ、既にヘーメルへ送還されていた。ヨハンは騒動の事を女王陛下に直接詫びたいと、アルベルティーナの体調が回復するまでわざわざ残っていてくれたのだ。

 まだ体力が戻らないアルベルティーナは、ベッドで半身を起こした状態で二人を迎え入れた。

 クリストフはさっさとベッドの傍へ置かれた椅子に座り、アルベルティーナのすぐ近くに陣取った。ヨハンにも椅子を勧めたが、彼は詫びに来たのだから、と頑なに座らず立ったままだった。

「――この度は……本当に申し訳ありませんでした。このような騒動を起こしてしまい、併合を破棄されても仕方ありません」

 ヨハンはアルベルティーナに深々と頭を下げた。

「いえ、私にも原因があったのだと思います。併合の話し合いをもっと、慎重にしていれば……」

「女王陛下に罪はありません! これは我が国の問題でした。それに女王陛下を巻き込んでしまった……重ねてお詫び申し上げます」

 ヨハンはそう言ってもう一度頭を下げた。

「もうお止めください、ヨハン王子。今回の件を理由に、ヘーメルとの併合を破棄する事は考えていません。今後はもっと親密に情報を交換し、前よりも更により良い関係になれると私は思っていますから」

「ありがとうございます……!」

 このヨハン王子なら、もうヘーメル国は大丈夫だ。アルベルティーナはそう確信していた。
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