女王陛下のお婿さま
「これから、ルイ王子はどうなるのですか?」
「父と話し合いをしてからですが……ヘーメルの片田舎に、王家の小さな離宮があります。そこへ幽閉される事になるでしょう」
「そうですか、残念です……」
毒を盛られたりと酷い事もされたが、ルイのこれからを思うと、アルベルティーナは胸が痛んだ。もう彼が自由になれる事は無いだろうから。
「アルベルティーナ様は、お優しいですね。あのような酷い目にあわれたのに、兄を案じてくださるなんて……これからそんなお優しい女王陛下が治める国の民になれる事を、誇りに思います」
急に誉められ恥ずかしくなり、アルベルティーナは頬が赤くなってしまった。
「おおお! そうだ、ティナ! これを期に、ヨハン王子と結婚を前提にお付き合いしてみたらどうだ?」
突然、ずっと静観していたクリストフが、嬉しそうにそんな提案を口にする。
「な……! 急に何を言い出すの、お父様!」
アルベルティーナは父をたしなめたが、どうもクリストフは本気のようだ。ニコニコと二人を交互に眺めている。ヨハンは――
「――大変光栄に思います、ありがとうございます」
「ええ?! ヨハン王子?!」
慌てるアルベルティーナに、ヨハンは笑顔を向けた。兄以上に美しい、金髪碧眼の天使のような笑顔で。
「しかし残念ながら私には、将来を誓い合ったフィアンセがおります。私の帰りを待っていてくれる姫を、裏切る事はできません」
どこまでも誠実なヨハン王子に、アルベルティーナはホッとして胸を撫で下ろした。一人、クリストフだけがしょんぼりと残念そうだった。