ハイエナ令嬢:幼なじみの年下魔王
3
 それでもお風呂は別々に入った。
 キランは事が冗談交じりでなく、アレクから本気になってこられると怖じ気づいたり迷ってしまって、「綺麗に洗いたい」という言い訳で昼間の誘いを撤回した。
 殺風景だが、それでも男なぞ入れることのない部屋で、キランは胸を高鳴らせて待つ。アレクなどは子供のときには出入りしたこともあったが、キランが女だと理解して、やや大きくなると遠慮するようにもなっていた(母親たちの暗殺や刑死で危機的で、父親侯爵の城や異母兄ヤギョの荘園に匿われていたという事情もある)。
 珍しく、めったに使わない柑橘系の香水まで髪にふりかけて、櫛でショートヘアを梳かす(ブラウンと黒に灰色が混ざったまだらみたいな髪の毛だ)。こんな天然の色が混ざった髪も、ハイエナ氏族(特に血統遺伝する女性)の特徴ではある。そして鏡で顔を見て、化粧をするかどうか悩んだがやめておいた(普段はしないから、かえって嫌がられるかもしればいし、キスで顔を舐められるかもしれないのだから)。

(急にこんなことになっちゃった)

 キランとしては、長く淡い期待があったとはいえども、嬉しさと戸惑いが混ぜこぜになって、落ち着かずに気持ちも考えもまとまらない。


4
「キラン、テンションがおかしくない?」

「だって、ったりめーっしょ!」

 頬を紅潮させたキランは少年に、素早く短いキスをチュッと盗んでから、目線を落としてちょいと恥じらってしまう。チラチラとアレクの顔をうかがう。やっぱりガッカリされないか心配だった。
 なぜならキランはスポーツ体型で、スタイルこそ良かったが、女らしさには欠けていると自分でも思っていた。プニプニしない筋肉質で腹筋まで浮かんでいたし、肌はキメは細かくも浅黒い。ミーシャの白絹の肌と女性らしいボディラインや触りごこちを知っているだけに。
 アレクの手が、胸やお腹やお尻を興味深く撫でまわしている。熱心で夢中になって、胸を指でクニクニ揉まれるのがくすぐったい。

「私って、固いでしょ? ミーシャだともっと柔らかいし肌も白いけど」

 なんだか申し訳ない。それなのにアレクはピンクの乳首に吸いついて舐めてくるので、つい「んっ」と甘い喘ぎがこぼれてしまった。赤ちゃんよりエッチな舐め方と触り方は、ミーシャの悪戯よりもいくぶん荒々しくて刺激的でもあった。

「キランって、しょっぱいミルクチョコみたいだ」


5
 キランは低く囁いた。

「あんたのだったら欲しい。何回でも犯して抱いて、子供産ませてみろよ」

 決意を決めた女の目。顔の距離は十センチ。
 アレクセイだって考えているだろうし、わかっているはずだ。異母兄のヤギョは山羊エルフのハーフだし、キラン伯父である獄長のロイ・ロドリゲスの母はハイエナ氏族(キラン祖母)だ。それからすれば、アレクセイがキラン孕ませたって不都合はないはずだった。
 ハイエナ娘はペロリと唇を舐める。その双眸には鬼火のような欲情が瞬いていた。
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