ハイエナ令嬢:幼なじみの年下魔王
3.5:婿殿(仮)と処刑カーニバル
1
あのとっ捕まえたヤク中と犯罪野郎ども、町の広場で素っ裸で晒し者にされていた。手枷・首枷で吊し立たされ、砂糖水をぶっかけられて全身に蟻が群がって、昨夜から悲惨に泣き呻いている。
石をぶつけようとする大きな男の子を、キランが止めた。
「ダメだよ。あなたはもう「大きい子」だし、男の子なんだもの」
キランはニッコリと背筋も凍る微笑を浮かべるのだった。
「男の力でやったら、すぐ死んじゃうでしょ!」
広場では、集まった見物人たち。
そして最前列には、石を持った小さな子供と女の子たち。
罪人たちの頭に、鉄のバケツがかぶせられるのはヘルメット替わりだ。頭に当たるとすぐ死んでしまったり気絶したら「面白くない」。
キランの若叔母(食堂担当)が笑顔で宣言する。
「はーい、皆さーん! こちらの四人の紳士たちが、昨日に市場で刃物を振り回したり放火した命知らず。おもてなししてあげましょう!」
拍手と歓声。そして投石。
これは「見せしめ」の儀式でもあった。うちの地区で(特に余所者が)悪事や乱暴狼藉するとどうなるかを、とっくりと思い知らせるための。「やられたらやり返す」という意思表示と精神的な訓練でもある。自分たちの町(地区)の平和と安全を守るためで、憂さ晴らしのカーニバルでもあった。
どうせ裁判官は買収されて「謎の無罪放免」を連発してくるだけだから、保安官たちも「ご自由にどうぞ」となる。別に止めようともせず、煙草吸いながら見守っている。真面目で律儀に収監や裁判するだけ金と時間の無駄だった。
何十個もの石がぶつけられ、斑のあざと血塗れになっていく。金的にも何発か当たるから悲惨に飛び跳ねたり身体をよじらせている。
やがて一通り終わると、ハイエナの若叔母さんが告げた。
「さあ! 子供に遊んで貰っただけでは足りないから、もっとサービスしてあげて!」
今度は大人の女たちと大きな男の子たちが棍棒や鉄の棒を持って前に出て、四方八方からめった打ちに殴り据える。悲鳴と命乞いの言葉は嘲笑と怒号で掻き消される。
さっきにキランが止めた男の子も飛び出してきて、向こう脛を鉄の棒で思い切りぶん殴った(悲鳴と、骨が折れ砕ける音もした?)。
そうこうするうちにぐったりしてしまうが、そのときに「豚軍団」が登場。
「皆さんお疲れだし、豚さんたちもお腹を空かせて可哀想」
司会役のハイエナ叔母さんが、アレクセイに向かって目配せした。
「豚さんが食べやすいように、ホスト(主人)がお肉を切り分けてあげてくださいな。皆さん! こちらの若様が、うちのキランのダーリンなんです」
歓声、拍手と口笛。
叔母さんとキランは誇らしげだ。
アレクセイは剣を抜いて、瀕死になった四人の罪人たちをバラバラに切り裂いて、豚の餌にしやすいようにしてやる。腕や足を倒れ込む前に幾つもの輪切りにして、ぶちまけた内蔵まで切り裂くのだから、剣術の腕前はお見事。頭蓋骨も叩き割って、豚どもが脳ミソを食べやすいようにしてやる深謀遠慮。
これこれハイエナ・ファミリーに認められる「テスト」であって「通過儀礼」や「儀式」。満点。
大喝采になった。
見よ! これがハイエナ姫の素敵な王子様だ!
2
こんなふうだから、獣エルフたちの中でもハイエナ氏族は魔族たちにさえ恐れられる。騎士や魔王以外の下級の魔族たちからすれば、同等以上の戦闘力と凶暴性である。
本日の処刑カーニバルの仕上げのお手伝いに、五六歳くらいの男の子が、大きなハンマーを持って出てくる。バラバラになった罪人たちの残骸の断片を叩き潰してやる。
「えいっ! えいっ!」
可愛らしい掛け声で、血肉を飛び散らせる。
もう二人のハイエナ氏族の子供が、鉄の棒で骨を砕いていく。豚が骨までを食べやすいようにするためだ。
若叔母が健気な子供たちを労ってやる。
「よく頑張ったねえ! これで、豚さんもごちそうにありつけるし、この阿呆どもも、豚のクソに生まれ変わって今までより良い身分になれる」
観衆たちからは朗らかな笑い声。
ふっくらした頬に返り血が飛んでハンマーを持った子ども(キランの幼い従弟)はアレクセイとキランを交互に見て、感動と羨望の眼差しだった。
「キラン姉ちゃんと結婚するんだよね! オレもお兄ちゃんみたいにかっこよくなりたい!」
幼く可憐な野性の凶暴性と愛でキラキラと瞳を輝かせているのだった。きっとあのハイエナ監獄の恐るべき獄長も、幼き日にはこんなふうだったのかもしれない。
アレクセイとしてはやや困惑しつつも、感慨深い一連の出来事だった。
3
こんなカーニバルも、あながち正当な理由がないわけではない。
なにしろキランの母は、敵対的なギャンググループから暗殺で惨殺されている。そしてボーナの都市や地方は警備軍だけでは治安が維持できず、ほとんど内戦や戦国時代も同然。住民たちが身を守って生活を維持するため、こんな行動や態度に出るのも必然ではあった。
あのとっ捕まえたヤク中と犯罪野郎ども、町の広場で素っ裸で晒し者にされていた。手枷・首枷で吊し立たされ、砂糖水をぶっかけられて全身に蟻が群がって、昨夜から悲惨に泣き呻いている。
石をぶつけようとする大きな男の子を、キランが止めた。
「ダメだよ。あなたはもう「大きい子」だし、男の子なんだもの」
キランはニッコリと背筋も凍る微笑を浮かべるのだった。
「男の力でやったら、すぐ死んじゃうでしょ!」
広場では、集まった見物人たち。
そして最前列には、石を持った小さな子供と女の子たち。
罪人たちの頭に、鉄のバケツがかぶせられるのはヘルメット替わりだ。頭に当たるとすぐ死んでしまったり気絶したら「面白くない」。
キランの若叔母(食堂担当)が笑顔で宣言する。
「はーい、皆さーん! こちらの四人の紳士たちが、昨日に市場で刃物を振り回したり放火した命知らず。おもてなししてあげましょう!」
拍手と歓声。そして投石。
これは「見せしめ」の儀式でもあった。うちの地区で(特に余所者が)悪事や乱暴狼藉するとどうなるかを、とっくりと思い知らせるための。「やられたらやり返す」という意思表示と精神的な訓練でもある。自分たちの町(地区)の平和と安全を守るためで、憂さ晴らしのカーニバルでもあった。
どうせ裁判官は買収されて「謎の無罪放免」を連発してくるだけだから、保安官たちも「ご自由にどうぞ」となる。別に止めようともせず、煙草吸いながら見守っている。真面目で律儀に収監や裁判するだけ金と時間の無駄だった。
何十個もの石がぶつけられ、斑のあざと血塗れになっていく。金的にも何発か当たるから悲惨に飛び跳ねたり身体をよじらせている。
やがて一通り終わると、ハイエナの若叔母さんが告げた。
「さあ! 子供に遊んで貰っただけでは足りないから、もっとサービスしてあげて!」
今度は大人の女たちと大きな男の子たちが棍棒や鉄の棒を持って前に出て、四方八方からめった打ちに殴り据える。悲鳴と命乞いの言葉は嘲笑と怒号で掻き消される。
さっきにキランが止めた男の子も飛び出してきて、向こう脛を鉄の棒で思い切りぶん殴った(悲鳴と、骨が折れ砕ける音もした?)。
そうこうするうちにぐったりしてしまうが、そのときに「豚軍団」が登場。
「皆さんお疲れだし、豚さんたちもお腹を空かせて可哀想」
司会役のハイエナ叔母さんが、アレクセイに向かって目配せした。
「豚さんが食べやすいように、ホスト(主人)がお肉を切り分けてあげてくださいな。皆さん! こちらの若様が、うちのキランのダーリンなんです」
歓声、拍手と口笛。
叔母さんとキランは誇らしげだ。
アレクセイは剣を抜いて、瀕死になった四人の罪人たちをバラバラに切り裂いて、豚の餌にしやすいようにしてやる。腕や足を倒れ込む前に幾つもの輪切りにして、ぶちまけた内蔵まで切り裂くのだから、剣術の腕前はお見事。頭蓋骨も叩き割って、豚どもが脳ミソを食べやすいようにしてやる深謀遠慮。
これこれハイエナ・ファミリーに認められる「テスト」であって「通過儀礼」や「儀式」。満点。
大喝采になった。
見よ! これがハイエナ姫の素敵な王子様だ!
2
こんなふうだから、獣エルフたちの中でもハイエナ氏族は魔族たちにさえ恐れられる。騎士や魔王以外の下級の魔族たちからすれば、同等以上の戦闘力と凶暴性である。
本日の処刑カーニバルの仕上げのお手伝いに、五六歳くらいの男の子が、大きなハンマーを持って出てくる。バラバラになった罪人たちの残骸の断片を叩き潰してやる。
「えいっ! えいっ!」
可愛らしい掛け声で、血肉を飛び散らせる。
もう二人のハイエナ氏族の子供が、鉄の棒で骨を砕いていく。豚が骨までを食べやすいようにするためだ。
若叔母が健気な子供たちを労ってやる。
「よく頑張ったねえ! これで、豚さんもごちそうにありつけるし、この阿呆どもも、豚のクソに生まれ変わって今までより良い身分になれる」
観衆たちからは朗らかな笑い声。
ふっくらした頬に返り血が飛んでハンマーを持った子ども(キランの幼い従弟)はアレクセイとキランを交互に見て、感動と羨望の眼差しだった。
「キラン姉ちゃんと結婚するんだよね! オレもお兄ちゃんみたいにかっこよくなりたい!」
幼く可憐な野性の凶暴性と愛でキラキラと瞳を輝かせているのだった。きっとあのハイエナ監獄の恐るべき獄長も、幼き日にはこんなふうだったのかもしれない。
アレクセイとしてはやや困惑しつつも、感慨深い一連の出来事だった。
3
こんなカーニバルも、あながち正当な理由がないわけではない。
なにしろキランの母は、敵対的なギャンググループから暗殺で惨殺されている。そしてボーナの都市や地方は警備軍だけでは治安が維持できず、ほとんど内戦や戦国時代も同然。住民たちが身を守って生活を維持するため、こんな行動や態度に出るのも必然ではあった。