ハイエナ令嬢:幼なじみの年下魔王
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「ヤギョ兄様の、ワインの馬車に乗せてもらってきたの。あの鬼ババアがお城に来てるから、避難してたのよ!」
どこかミーシャとも似ている、混血魔族の姫君ルチアは、姉で「側近の臣下」でもあるミーシャに口を尖らせる。エルフの酋長でもあるヤギョは領地の森と畑で葡萄・オリーブなどの栽培や酒造も行っていて、都市や村々とも交易している。
なおルチアが言う「鬼ババア」とは純血魔族(が建前)の異母姉、伯爵夫人サビーナ・クルスニカのことで、人間の母親サリーとサビーナの確執は娘へと引き継がれている(何度か殺されかかったそうだ)。ヤギョ(母親は山羊エルフ)には「兄」として懐いており、その点ではヤギョをライバル意識しているアレクセイも同様だろう。
小生意気な少年が、妹に続いて口を開いた。
「あのヤギ野郎、自分らで行けるって言ったのに、荷馬車に乗ってけってうるさくって。ガキ扱いしやがるけど、ルチアはまあ馬車の方が良いだろうし、一人で出歩かせられないしな」
現実的な話として、ルチアは人質としての価値からも、他の魔族ギャングから襲われたり誘拐される危険は多々あるだろう。強い魔族や深淵エルフに襲われたら、身を守るには力も足りないし、高貴な血筋からすれば商品としての値打ちも高い(拉致して奴隷として売りに出せば、愛人の畜妾として買う者は魔族でも人間でも、いくらでもいるだろう。父侯爵や兄のヤギョからの奪還・報復や制裁されるリスクがあったとしても!)。
アレクセイはヤギョには男兄弟同士でよく突っかかっているし、ライバル視してもいて、ヤギョからは「あいつ反抗期だな」とあしらわれたりからかわれているそうな。ちなみにヤギョは母親が草食の山羊エルフであるためなのか、ハーフ魔族であるのに人肉を食べたがらない(一般に、魔族は人肉や生き血を食って特殊な酵素や栄養素を必要とするし、そういうアイデンティティや文化がある)。鶏肉や魚は喜んで食べるし、代用食の「ピンクポテト」や「紫ハーブ」も好物なのだが、他の上級魔王の晩餐会を「メニューが気にくわない・趣味に合わない」と蹴ったこともあるらしい(魔族を粗暴で邪悪過ぎると嫌っていて、むしろエルフやドワーフと仲が良い)。
「あのスケベ女、ルチアには何するかわかったもんじゃないからな。それにミーシャやキランの顔でもたまには見てやろうかと思って」
アレクセイは姉とその友人に、顔を背けたままで、できるだけ尊大っぽく言った。父親の「魔族の貴公子」としてのプライドと教育の影響なのか、いわゆる「意識高い系」で精一杯の気取り。「スケベ女」とは異母姉サビーナのことで、彼女はルチアは毛嫌いしながら、その同母兄である異性のアレクセイのことは憎からずらしい(魔族は近親での結婚も多いそうだが)。
「ふうん?」
キランが意味ありげに目を細め、チラとミーシャにも目配せする。ミーシャも含み笑い。二人とも、この少年のひねくれた俺様根性を見透かしているのだから。ルチアもわかっているらしく、両手で頬杖しながら面白そうに兄の様子に目を爛々と輝かせる。
一番好きな女二人に会いたかった?
アレクはキランとミーシャが初恋で、本性がマザコンでシスコンだし、キランが他の男に盗られないか気にしてるでしょ?
気配と場の空気で察したらしく、アレクセイは眉間に皺を寄せて黙り込んだ。
「ヤギョ兄様の、ワインの馬車に乗せてもらってきたの。あの鬼ババアがお城に来てるから、避難してたのよ!」
どこかミーシャとも似ている、混血魔族の姫君ルチアは、姉で「側近の臣下」でもあるミーシャに口を尖らせる。エルフの酋長でもあるヤギョは領地の森と畑で葡萄・オリーブなどの栽培や酒造も行っていて、都市や村々とも交易している。
なおルチアが言う「鬼ババア」とは純血魔族(が建前)の異母姉、伯爵夫人サビーナ・クルスニカのことで、人間の母親サリーとサビーナの確執は娘へと引き継がれている(何度か殺されかかったそうだ)。ヤギョ(母親は山羊エルフ)には「兄」として懐いており、その点ではヤギョをライバル意識しているアレクセイも同様だろう。
小生意気な少年が、妹に続いて口を開いた。
「あのヤギ野郎、自分らで行けるって言ったのに、荷馬車に乗ってけってうるさくって。ガキ扱いしやがるけど、ルチアはまあ馬車の方が良いだろうし、一人で出歩かせられないしな」
現実的な話として、ルチアは人質としての価値からも、他の魔族ギャングから襲われたり誘拐される危険は多々あるだろう。強い魔族や深淵エルフに襲われたら、身を守るには力も足りないし、高貴な血筋からすれば商品としての値打ちも高い(拉致して奴隷として売りに出せば、愛人の畜妾として買う者は魔族でも人間でも、いくらでもいるだろう。父侯爵や兄のヤギョからの奪還・報復や制裁されるリスクがあったとしても!)。
アレクセイはヤギョには男兄弟同士でよく突っかかっているし、ライバル視してもいて、ヤギョからは「あいつ反抗期だな」とあしらわれたりからかわれているそうな。ちなみにヤギョは母親が草食の山羊エルフであるためなのか、ハーフ魔族であるのに人肉を食べたがらない(一般に、魔族は人肉や生き血を食って特殊な酵素や栄養素を必要とするし、そういうアイデンティティや文化がある)。鶏肉や魚は喜んで食べるし、代用食の「ピンクポテト」や「紫ハーブ」も好物なのだが、他の上級魔王の晩餐会を「メニューが気にくわない・趣味に合わない」と蹴ったこともあるらしい(魔族を粗暴で邪悪過ぎると嫌っていて、むしろエルフやドワーフと仲が良い)。
「あのスケベ女、ルチアには何するかわかったもんじゃないからな。それにミーシャやキランの顔でもたまには見てやろうかと思って」
アレクセイは姉とその友人に、顔を背けたままで、できるだけ尊大っぽく言った。父親の「魔族の貴公子」としてのプライドと教育の影響なのか、いわゆる「意識高い系」で精一杯の気取り。「スケベ女」とは異母姉サビーナのことで、彼女はルチアは毛嫌いしながら、その同母兄である異性のアレクセイのことは憎からずらしい(魔族は近親での結婚も多いそうだが)。
「ふうん?」
キランが意味ありげに目を細め、チラとミーシャにも目配せする。ミーシャも含み笑い。二人とも、この少年のひねくれた俺様根性を見透かしているのだから。ルチアもわかっているらしく、両手で頬杖しながら面白そうに兄の様子に目を爛々と輝かせる。
一番好きな女二人に会いたかった?
アレクはキランとミーシャが初恋で、本性がマザコンでシスコンだし、キランが他の男に盗られないか気にしてるでしょ?
気配と場の空気で察したらしく、アレクセイは眉間に皺を寄せて黙り込んだ。