ネコのお話聞き屋さん
「話は聞いてもらいたいけど、
ここ、暑いからちょっと移動しよう。抱っこしても良い?」
- 良いよ。
私はそこに広げたものを手早く片付け、子猫を抱き上げる。
「わー、ふかふかー。あったかーい」
地下鉄の入り口だけならネコが入っても大丈夫だろう。人通りが多くてあまり涼しくないし、清潔でもないから、また子猫の下にハンカチを敷く。

「ねこちゃん、お名前教えて」
- 冷やし中華。
スケッチブックに現われた文字を私は二度見した。え? え? めずらしい名前だね。
- 伊達政宗。
「絶対に違う」
- マレー*・ディー*リッヒ。
「誰!?」

この子猫、いったい何者なんだろう。ネコか。

「あなたにお話聞いてもらったら、いくらかかるの?」
- 高級キャッ、
- シーフードのカップラーメン。
「一瞬本音が出たな」
私は子猫を半目で見る。子猫の顔はニコニコしているように見える。私はまた、子猫にお水をあげた。

「うちのお母さんがうるさいんだよ。いつも。
勉強しなさい。スカート短い。化粧が濃い。電話長い」
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