響け、希望と愛の鐘
そう言って、優美は事務所の階段を昇ろうとしたところで、誰かとぶつかった。

「ちょっと!

どこ見て歩いてるのよ。

歩く時はちゃんと前を見て、って小さい頃に教わらなかったの?」

「ごめんって。

 怪我はしてない?
って、あれ?

その声、優美ちゃんだよね!?

御劔 優美(みつるぎ ゆうみ)ちゃん。

俺、矢萩 裕貴(やはぎ ゆうき)

小学校の頃一緒で、よく、ハギくん、って呼んでくれてたよね?

アガパンサスを押し花にした栞、優美ちゃんが中学受験する前に渡したの、憶えてる?」

 まったく憶えていない。

「コラ、いつまで立ち話してるんだ!

中に入れ。

済まないね、初日からこんなんで」

優美たちに声をかけたのは、所長で上司の安達 舞(あだち まい)さんだ。

「今日から、この事務所に新しい仲間が増える!

矢萩くんだ。

彼は弁護士資格も持っているから、学べることも多いはずだ。
特に優美ちゃんはな。

仲良くするように!

今日は矢萩くんの歓迎会するからな、仕事は定時で切り上げること!

では、今日も頑張ろう」

安達さんが呑みたいだけじゃない?

優美はそう思いながら、物珍しそうに周りを見渡す矢萩に落ち着けと声を掛ける。

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