響け！猛毒のグラーヴェ

「うるさいうるさい！！その欠陥品が私の飲みたい茶葉で淹れなかったのが悪いのよ！！今日はダージリンじゃなくてアッサムの気分だったのに！！さすが種族としても人としても出来損ないなだけあるわ！！」

エミリーが喚く。その声に女性が肩を震わせ、マルティンが「エミリー様！！」と大声を上げる。レオンハルトの耳には、それはまるで怒鳴り付けているように聞こえた。

「ああもう！！本当にウザい！！」

エミリーはそう吐き捨て、ドタドタと大きな足音を立てながら庭を出て行く。客人をもてなさずに放り出すなど貴族社会ではあり得ないことだ。レオンハルトはため息を吐きたくなるのをグッと堪え、女性に話しかける。

「お嬢様、大丈夫ですか？」

「お、お嬢様だなんて……。私はルシア・イグレシアスと申します。人間でメイドです」

ルシアは恥ずかしそうに顔を赤くする。アントーニョが頭をガシガシかきながらマルティンとルシアを見つめた。

「あんたら大変だな。俺、正直あのお嬢様に仕えたら一日も持たねぇ」

「エミリーお嬢様の癇癪は今に始まったことではございませんので」

そう言って笑ったマルティンは、どこか疲れ切っている様子だった。