響け！猛毒のグラーヴェ
「エビとズッキーニのカルパッチョ、ストラッチャテッラ添えです」

レモンとオリーブオイルの香りがレオンハルトの鼻に入り込む。食欲が湧いてくるのを感じた。

「うまそ〜！」

アントーニョが笑顔を見せた。エミリーがアントーニョに微笑みかける。レオンハルトはフォークを手にし、エビを口に入れた。

「おいしいですね」

「でしょう。セバスチャンの作る料理はどれもおいしいの！」

レオンハルトにエミリーが笑いかける。専属のシェフではなく執事長のセバスチャンがキッチンに立っていることにレオンハルトは少し驚く。彼の仕事は通常の執事長よりも多いことになってしまう。

（執事の仕事だけでなく、こんなにもおいしい料理を作れるのか……）

レオンハルトが感心を覚えていると、前菜を食べ終えたアントーニョがエミリーに訊ねる。

「そういえば、何でレオンを屋敷に招待したんすか？」

「あらいけない。忘れるところだったわ」

エミリーがパチンと指を鳴らすと、セバスチャンとマルティンが料理ではなくイーゼルに立てかけられた状態のキャンバスを持ってくる。三枚の絵がレオンハルトとアントーニョの前に並んだ。
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