響け！猛毒のグラーヴェ
左に置かれた絵は、美しいドレスと宝石で着飾った女性の絵だった。キャンバスの右下にはエミリー・ストーンとサインが書かれている。

真ん中の絵は、美しい湖の絵だった。雲一つない晴天の下、美しい湖には白鳥が泳いでいる。こちらの絵にもエミリー・ストーンと左に置かれた絵と同じ場所にサインがあった。

右の絵は、美しい花瓶にいけられた花束だった。花の種類はバラで、ピンクと赤と白という赤系の濃淡で組み合わせがされている。二つの絵と同様、こちらにもサインが書かれている。

「この三つの絵、二つは私が描いたもの。でも一つは赤の他人が描いたものよ。ジッキンゲンさんには偽物の絵を見つけてほしいの。あなたは有名な探偵さんなんでしょう？」

挑発的にエミリーが笑う。レオンハルトは絵を見つめた。どれも美しい絵で、「偽物がある」と言われなければエミリー・ストーンの描いた絵だと信じていただろう。

（絵画についての知識はそれほどないな……）

絵が好きな貴族と美術館へ家族と行ったことはあるものの、レオンハルト自身に芸術の知識はほとんどない。しかしーーー。
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