響け!猛毒のグラーヴェ
妖精は声を荒げたままだ。ルシアは悲しげに俯く。そんな彼女を妖精は睨み付けた。

「私たちはエミリー様にずっと仕えてる!!エミリー様の持病も、エミリー様の毎日のルーティンだって知ってる!!それを利用したんでしょ!?朝、エミリー様がアトリエで絵を描く時、エミリー様が飲むジュースを持って行くのはあんたの仕事だからね!!」

「おい!!客人の前だぞ!!」

マルティンが声を荒げる。しかし、妖精はルシアを睨み付けたままだ。アントーニョが頭をガシガシかきながら言った。

「あのさ、昨日から気になってんだけどエミリー嬢の病気って何なんだよ。いい加減教えろ」

「申し訳ございませんが、旦那様よりお嬢様のご病気については外部の者に漏らすなと言いつけられております」

セバスチャンの言葉に、アントーニョが「それが何なんだよ!人が亡くなったんだぞ?」と言いながら戦闘体制を取る。それをレオンハルトは「トーニョ」とすぐに止めた。

貴族社会とは、華やかに見えて残酷な世界だ。病気や自己破産といったマイナスな情報はあっという間に根も葉もない話と共に広がってしまう。そうなれば社交界での居場所を失うことになりかねない。そのため、多くの貴族たちはマイナスとなり得る事情は隠すことが多いのだ。それをレオンハルトはよくわかっている。
< 40 / 58 >

この作品をシェア

pagetop