響け！猛毒のグラーヴェ

「ち、違……」

ルシアの呼吸が荒くなっていく。その時だった。マルティンが「ルシアはやっていない！！やったのは俺だ！！」声を上げる。それは狼の咆哮だった。声を上げながらマルティンは拳を振り上げ、レオンハルトを殴り付けようとする。その時だった。

「やっと動いたか」

アントーニョが腕を虎のものに変化させ、マルティンの拳を受け止める。刹那、その腕を強く掴んだ。

「ジュースをすり替えたのはあんただろ？ルシアさんを囮にすれば絶対に名乗り出ると思ったぜ。マルティン・サビナさん」

アントーニョの挑発的な笑みに、マルティンは顔を真っ青にした。それを見届けたレオンハルトは、ルシアに頭を下げる。

「ルシアさん、申し訳ありませんでした。この事件は証拠がありません。犯人の自白に頼るしかなかったんです。あなたを囮に使うことになってしまい、本当に申し訳ありませんでした」

「あの、どういうことですか？どうして私を囮に？」

ルシアは戸惑っている。レオンハルトはマルティンをチラリと見た後、思い返しながら言った。

「いつも、ルシアさんをマルティンさんは庇っていました。エミリー嬢からもです。なので、ルシアさんが疑われればマルティンさんは必ず自白すると思いました」