響け！猛毒のグラーヴェ

「リズ、わかったかな？」

「……あまり自信はありませんが」

偽物の絵をレオンハルトとリズは同時に指差していた。それは着飾った女性の絵である。

「あ？これが偽物なのか？」

「エミリー・ストーンの絵と言っても問題なさそうだけどねぇ」

アントーニョとオルハンが絵を見つめる。マーガレットとカナタが首を傾げる中、レオンハルトは絵のサインを示した。

「私は絵のことはさっぱりわからない。でもわかったよ。サインに注目してほしい」

「サイン？」

全員の目が「エミリー・ストーン」のサインに向けられる。レオンハルトは続けた。

「このサイン、Eの文字だけやけに濃いと思わないかい？それに絵の具でサイン周りだけ塗り直されている。サインを書いている途中で擦れて周りを汚してしまったんだ」

その言葉にオルハンが目を見開く。

「そうか。このサインは左手で書かれているんだ。文字は右利きを基準に作られているから「引き」書きをするのが一般的。でも左利きだと「押し」書きになる。だから文字の書き始めが濃くなり、手が擦れて周りを汚してしまったりするんだ」