俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする
その夜、帰宅してソファに座ると、スマホが震えた。

「来月の土日、予約取れたよ」
「ちょっと奮発してみた」
「部屋に露天風呂ついてるタイプ」
「静かで料理も評判良いみたい。瑞希さん、疲れてるだろうから」

優しい言葉に、胸がきゅっとなった。


なのに──

(藤堂との出張なんて……言えない)

スマホを握る手に、力が入った。

仕事なのに。
ただの業務で、感情なんてないのに。

言わなかったことを、責められるわけじゃない。
でも、自分で自分を誤魔化してるような気がした。

佐久間さんの言葉は、あたたかいのに。
その優しさに、ちゃんと応えたいのに。

(完璧に“他人”として藤堂と向き合えるなら、
私も、もっと楽になれるのかな……)

けれど。

脳裏に浮かんだのは、
会議室で見た、仕事に集中する藤堂の横顔。

あの真剣な眼差し。
それに、少しも動じない冷静な口調。

「……ずるいよ」

つぶやいて、スマホを伏せた。

佐久間さんのLINEには、まだ返信できずにいた。
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