俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする

7

藤堂との地方出張。
プレゼンは、完璧だった。

数字の流れも、ニーズへの訴求も、質疑応答さえスムーズに交わせた。
終わった直後、相手の担当者が口元をほころばせて言った。

「いやあ……さすが御社ですね。
藤堂さん、月岡さん、おふたりの連携が素晴らしかったです」

礼をして会場を出た瞬間、肩の力が抜けた。

「お疲れさま」

藤堂が言った。
その声も、どこまでも自然で、仕事の空気を引きずったままだった。

「……お疲れさまです」

私も、素直に返した。

ホテルへ戻る車内では、お互いにそれ以上多くを語らなかった。
けれどその沈黙は、不思議と重くなかった。

むしろ、満ち足りた空気のように思えた。

(……やっぱり、藤堂は仕事ができる)

そう、思ってしまう自分がいた。
どこか、悔しいような。
でも、安心するような。

そしてまた、思ってしまった。

(藤堂がいて、よかった)


チェックインを済ませ、それぞれ部屋に入る前。

「夕飯でも食べに行かないか?」

藤堂が言った。

彼はシャツの袖を無造作にまくっていた。
疲れているはずなのに、どこか落ち着いていて余裕すらある。

「軽くでいい。まだ、話しておきたいこともあるし」

「……話、ですか?」

「仕事の。明日の報告書、方向性決めとこうかと思って」

(……本当に、仕事だけ?)

そう思ってしまうのは、私がまだ、少し過敏だからだろうか。

だけど。

あのプレゼンのあとで、無言で部屋にこもるほど、私はドライになれなかった。

「……わかりました。じゃあ、ロビーで10分後に」

そう言って、部屋へ戻った。

扉を閉めた瞬間──心臓が、静かに波打っていた。
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