俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする

9

藤堂side

部屋のドアが閉まると、もう何も抑えられなかった。

再び、彼女の唇を探す。
さっき、ホテルへ向かう道で、あのケーキ屋の前で、思い出がふわりと蘇った瞬間から、
俺の中で何かが決壊していた。

もう一度キスをしても、瑞希は拒まなかった。

…拒まない。

それだけで、頭の奥が真っ白になっていく。
ずっと、こうしたかった。
もう一度、彼女を抱きしめたかった。
確かめたかった。3年経っても、自分の気持ちはひとつも変わっていないって。

キスを重ねながら、ベッドへと導く。

瑞希の腕が、俺の肩に回ったとき、心臓が跳ねた。

――届いてる。きっと、届いてる。

彼女をそっとベッドに寝かせた。
ブラウスが少し乱れて、首筋の汗が光って見えた。

「……汗くさいよ」

ぽつりと漏れた瑞希の言葉に、思わず笑ってしまう。

「それが、俺のせいなら、うれしいけどな」

ネクタイを外し、シャツを脱いでいく。
そして、彼女のブラウスのボタンに手をかけた。

一つ、二つ――
白い下着が見えて、喉が鳴る。

思わず、もう一度、優しくキスをした。

「……ん」

その声が、甘く、艶やかに響いて――

次の瞬間だった。

「……ぐぅ……」

……ん?

彼女の腕が、ふわりとベッドに落ちる。
目を閉じたまま、穏やかな寝息。

「……寝た?」

いやいや、こんなタイミングで?
ここからってときに?

しばらく呆然として、それからふっと笑った。

相変わらずだな、お前は。
どれだけ緊張してても、どれだけドキドキしてても、疲れたら眠っちゃうんだ。

仕方ない。

そっと彼女のブラウスを整え、毛布をかけた。

隣に腰を下ろし、しばらくその寝顔を見つめる。

(……かわいい)

そして、俺も服を羽織り直して、離れたソファに横になった。

――まだ、何も終わってない。
俺たちは、始まりにも立っていない。

でも。

やっと、一歩踏み出せた気がする。
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