俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする

11

出張先からそのまま会社に戻った。

外回りの資料とPCをまとめて持って、
社内の空気に紛れるように、私は席へ戻る。

「お疲れさまでしたー!」

同僚の声が飛んでくる。
当たり前の挨拶のはずなのに、なんだか気が重い。

そんなときだった。

目が合った。

佐久間さん。

営業フロアの奥、コピー機の前で、
彼がこちらを見ていた。
いつもの穏やかな目なのに、
なぜか胸がぎゅっと締めつけられる。

私は小さく会釈をして、視線を逸らした。

(……何もしてない。してないけど、)

自分にそう言い聞かせる。
だけど、体温はまだ覚えていた。
昨夜、あの部屋で感じた藤堂の熱を――
思い出しちゃ、ダメなのに。

椅子に腰を下ろすと、冷たい椅子の感触に、少しだけ現実に戻る。

デスクに戻ってきた佐久間さんが、何気なく声をかけてきた。

「出張、お疲れさま。どうだった? 藤堂さんと組むの、久しぶりだったんじゃない?」

「……すごく、仕事ができる人でした」

それだけ答えるのが精一杯だった。

佐久間さんは、少しだけ間を置いて、優しく微笑んだ。

「来月の旅行、楽しみにしてるから」

笑顔がやさしすぎて、
胸の奥にじくじくと罪悪感が広がった。
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