俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする

14

「ごめん、瑞希ちゃん。ちょっと仕事が立て込んでて……」
佐久間さんからの電話。

「え?」

「実は、さっきの電話、藤堂さんからで……俺のミス、けっこう大きくて。わざわざ、藤堂さんがフォローに来てくれた」

「…………」

頭の中が真っ白になる。

藤堂が……?
藤堂がこの旅館にいる?

「なんで、ここに……?」

ぽつりと漏れた声は、自分でも気づかないほど震えていた。

佐久間さんはそれに気づかず、苦笑いを浮かべながら言う。

「いや、さすがっていうか、すごい人だよ、藤堂さん。…俺、やらかしたな」

この旅館に、藤堂がいる。
同じ空気を吸ってる。
たったそれだけのことが、どうしようもなく心をざわつかせる。

温泉の香りも、やわらかな光も、佐久間さんの優しさも──
一気に、色を失っていくような気がした。
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