俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする
藤堂とのデートは、前から行きたかった美術館だった。
静かな空間の中で、少し照れくさそうに解説パネルを読む藤堂の横顔を見ているだけで、胸の奥がじんわりと温かくなった。

彼の隣にいる時間が、こんなにも心地よいなんて。
でも、その幸せが、どこかで終わってしまうかもしれないと思うと、何度も喉の奥が詰まった。

館内を出て、日が落ちた街並みを歩いていると、藤堂がふと足を止めた。

「なあ、今夜も…俺の家で食べよう?」

なんてことない口調で言われたけれど、私はほんの一瞬だけ、呼吸が止まった気がした。

“また”という言葉が引っかかる。
“いつものように”と誘ってくれるその優しさが、今は、少しだけ切なかった。

私は少しだけ笑って、頷いた。

「うん。環のごはん、また食べたい」

“また”を、受け取ってしまった。
この時間が続くと信じたくて。
ほんの少しでも長く、藤堂のそばにいたくて。

それでも、胸の奥には、ずっと聞けないままの不安が澱のように沈んでいた。
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