俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする
キッチンに立つ藤堂が、ふとこちらを振り返って言った。

「今日は、クリームシチューだよ」

その言葉に胸がきゅっとなった。
なんでもない日常のひとコマなのに、どうしてこんなにも愛おしいんだろう。

「……環、好き」

自分でも驚くほど自然に、声が漏れた。

藤堂が手を止めて、目を見開いて、こちらをじっと見つめる。

「……もう一度言って」

そのまなざしが真っ直ぐで、あたたかくて、ソファの上でぎゅっと抱いていた、シェパードのぬいぐるみをもう一度抱きしめた。

「環が好きなの。環のそばに、ずっといたい」

藤堂の顔が、ゆっくりとほどけていく。
なにも言わず、静かに私の方へ近づいてきた。

そして、シェパードをそっと隣において、私をそっと抱きしめる。

「……俺も瑞希が好きだよ」

その声が耳元に届いたとき、胸の奥がじんわりとあたたかくなった。

なにかが、ようやく報われた気がした。
そして、ようやく始まる気がした。
< 73 / 89 >

この作品をシェア

pagetop