俺様な忠犬くんはご主人様にひたすら恋をする

26

ぎゅっ——。

腕の力が、少しだけ強くなる。
それはまるで、もう二度と離さないと誓うみたいな抱きしめ方だった。
でも、瑞希にはそれがたまらなく心地よかった。
ようやく戻ってきた、温もりの場所。

「……環って呼んでくれた」

藤堂が、耳元でぽつりと呟いた。
その声には、どこかくすぐったさと、噛みしめるような嬉しさがにじんでいる。

「……あのときは、本当にごめん」

その言葉には、あの夜、すれ違ったすべてが詰まっていた。
時間を巻き戻せないことも、言葉で埋められないことも、藤堂は知っていた。
それでも、伝えずにはいられなかった。

瑞希は、そっと目を閉じた。
胸の奥にあった小さな棘が、少しずつ溶けていくのを感じながら。
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