あなたに恋する保健室

第2章

 私が新人養護教諭として勤務して早くも二週間が経過していた。
 京ちゃんは相変わらず何かと理由をつけて毎日保健室に顔を出してくれていて、正直心が楽になるし嬉しかったりする。
 ここでの毎日は、病棟やクリニックとは違う忙しさに追われている。
 春は生徒たちの定期健康診断があるから、それに向けた計画の立案、準備を進めながら、日々の養護教諭としての業務、保健だより作成、保健委員会の委員会活動の監督など多岐にわたる。
「ちょっと寝たら頭痛いのだいぶ楽になりました。教室戻ります。ありがとうございました」
 頭痛を訴えて休養を取りに来た子が起きて声をかけてくれた。
「それは良かった。毎日、部活と塾って大変だもんね。無理せずにね」
「ありがとうございます」
 部活動と塾通いを両立させる生徒もいる。
 明らかなサボりであれば、話を聞いた上で保健室でのベッドを使用した休養の可否を判断するけれど、今のところそうした利用者はほとんどいない。
 みんな元気そうに見えて、何かしら抱えているのだ。
「今の子って大変ねぇ」
 柔らかな春風は少しずつ暖かさを増し、桜を散らせた。保健室は風通しがいい。心地よい風が頬を撫でる。
 窓の向こうから、体育の授業の様子が聞こえてくる。
 その音をBGMに、使用済のベッドのシーツを交換していく。
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