あなたに恋する保健室
「無理に話さなくていいけどさ。昔の記憶だと、優希はいつも頑張りすぎるから。なんかあったのかなって。ちょっと目が潤んでたし」
「……京ちゃんに隠し事、できないな」
 京ちゃんになら打ち明けたいと思った。
 昔のままの『優しいお兄ちゃん』。そんな京ちゃんに、私はつい甘えてしまう。
「氷室はるかさん、京ちゃんのクラスの子。その子についてなんだけどね……」
 私は保健室であったことを最初から最後まで話した。自分の不甲斐なさ、悔しさ、苦しさ。全部吐き出した。
 そして、私が養護教諭になる前の話も……。
「患者さんの死に耐えられなくなって辞めたんだ。新卒で入った病院。私は循環器科病棟に配属されて。循環器って心臓系の病気の患者さんが多くて急変しやすかったの」
 そこで何人も見送ってきた。
 愛されてたくさんの家族に囲まれて亡くなる方もいれば、独りでひっそりと亡くなる方もいた。
 多種多様な境遇の『死』を見つめてきた。
 そして私は、多忙な業務の中で最後を見送る環境に知らず知らずのうちに心が疲れ果ててしまっていた。
 ある日突然、身体が限界を迎えて仕事に行けなくなっていた。
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