あなたに恋する保健室
 1LDKのアパート。リビングには観葉植物があって白い壁によく映える。そして、そこらじゅうにいくつもの虫かごや水槽があった。
 中には生き物に合わせた木や植物なんかもレイアウトされていて綺麗だった。
 カエル、ドジョウ、エビ、クワガタ、コオロギ、チョウなどなど。いろんな生き物が同居している。
 事前に話は聞いていたけれど、まさかここまでとは思ってもいなかった……。
「引いた?」
「いや別に……ただこんなズラっと並んでて圧倒されたというか」
「そっか。良かった」
 京ちゃんはホッとした表情で正面のイスに座る。私も促されるままイスに座った。
「俺、彼女できても家に上がった途端ギョッとされて帰られた上、そのまま別れられたことあってさ」
「そう……なんだ」
 本人は面白い過去話として笑いながら話しているが、私はどうも気に食わない。
 京ちゃんだって三十二歳だ。交際経験ゼロなわけがない。私だって交際経験はあるし。
 でも、そういうことじゃない。京ちゃんに彼女がいたこと自体に妬いてしまったのだ。
「ちなみにその元カノさんって今……」
「県内の高校で教師してると思うけど。もう連絡も別れてから取り合ってないしなぁ。てか、一昨年だかに結婚したって噂で聞いたが」
「そ、そうなのね……」
 それを聞いてホッとしてしまっている私。
 私、本当に京ちゃんのこと……。
 そんな考えが過ぎってしまい、ブンブン頭を左右に振って気を紛らわせる。
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