あなたに恋する保健室
現場に到着すると、そこに倒れていたのは体格のいい男子生徒。
「澤田さんです。準備体操のランニングした後、ソフトボールのために準備をしようとしたら急に倒れて……」
「澤田さーん、澤田さーん!」
 私は両肩を強く叩く。けれど反応はない。
「岡野先生、一一九お願いします」
 意識がない時点で念のため救急要請をする。
 気道確保をして呼吸の様子を見る。
 ダメだ呼吸がない。
 私は素早く澤田さんのシャツを捲りAEDを開いて急いでパッドを付ける。
『解析中です。体に触れないでください。……ショックが必要です』
 よし。
 今すぐ胸骨圧迫。
 私ひとりで……いや、やらなきゃ。生徒はみんな怖がっている。安心させなきゃ。
「みんな大丈夫。岡野先生が救急車呼んでくれた大丈夫だからね。あと、心臓マッサージが必要みたい。誰か私と交代でやれるかな?」
 高校生には荷が重すぎる。
 やり方がわかっている大人であってもなかなか手を挙げられないだろう。
(仕方ない、一人でやるしかない!)
 私は岡野先生が戻ってくるまで胸骨圧迫を一人でやろうと決意した。
 体力が凄まじく消費されるこの胸骨圧迫を絶え間なく繰り返すのは一人では到底無理だ。
 それでもやらなくちゃ。
 この子が、目の前の命が、助けを求めているから……!
「いちっ、にっ、さん、しっ、ご……」
 誰か応援を頼まなくては。
 それだけなら、学級委員長の子に頼んでもいいだろうか……そんな悩みを抱えながらひとりでひたすら電気ショックと胸骨圧迫を繰り返す。
「いちっ、にっ、さん、し……」
 頭がクラクラしてきてマズいと思ったその時、私の肩が強く掴まれた。
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