あなたに恋する保健室
「それはそうと、なんで俺のこと避けてたんだ?」
「えっ?」
 学校に帰ってきて、すっかり誰もいない校舎の保健室。京ちゃんはいつものように黒いソファにドカッと座っている。
 私は今回の件の報告書をパソコンで作成していた。
「なんつーか、メッセージも来ないし……。顔出しにくかった」
「それはだって──」
 あの女性のことを見ちゃったから。
 と言いそうになったのを抑え込む。偶然見たとはいえ、なんだかプライベートを嗅ぎまわったみたいに思われるのも嫌だ。
「何?」
 京ちゃんはソファから立ち上がって、私に顔を近づける。
 その表情は、なんだかズルい。
 いつもはクールで大人しい男前なのに少年みたいなお茶目さもある虫大好き変人なのに。
 今日はしゅんとした大型犬みたいな。そんな顔。
「もう……」
 私はイスから立って京ちゃんと距離を置ことした。
「……待て」 
──ぎゅっ
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