あなたに恋する保健室
「京ちゃん、ここ学校……」
 ぎゅっと抱きしめられてしまい、慌てて私は京ちゃんから離れようとする。
 そんなふうに抱きしめられたら私……もっとあなたと一緒にいたくなる。あなたの特別になりたくなっちゃう。
 私はただの幼馴染でいようと頑張りたいのに……。
「離れないでよ」
「え……?」
 その声は、寂しさから来る色なのだろうか。ぼそりと呟いたその言葉はきっと本当のこと。
 そんな声、初めてだった。
「俺、優希が頑張ってるとこ見ると応援したくなる。それを近くで見てるのが楽しかったし、一緒に頑張りたいと思ってた。だから今日、間近で養護教諭として優希が人を救ってるのを見て、本当に感動したし、誰よりも褒めたいと思った。頑張ったな! って」
 私がこの抱擁から逃げようとすると、京ちゃんの太い腕がさらに力を入れて強く抱きしめられる。
 逃れられない。
「じゃあ……じゃあ、あの女の人は誰なのっ……」
 私は絞り出すような声で本心をぶつける。
 もう隠すことはできない。
「女……?」
「二週間くらい前、偶然見ちゃったの。夜、黒髪のポニーテールしてたスラッとした女の人とふたりで飲み屋街にいたとこ」
「……そんな女……てかそもそも女となんて飲んでないし……って、あっ、ああ!」
 京ちゃんは思い出した途端、大きな声で笑っていた。
 嫉妬する私がそんなに面白いの?
「何よ」
 睨みつけるように見て、ムッとした表情で反応する。
「いやいや、あれは女じゃない! 俺の後輩! 舞台俳優やってて髪伸ばしてんだって。多分こいつだろ?」
 そう言うとスマホを見せてくれた。
 たしかにこの髪の結い方と体型……この人っぽく見える。
 殺陣のシーンの写真なんかを見てると、身体の雰囲気がますますあの人のように見えた。
< 46 / 56 >

この作品をシェア

pagetop