あなたに恋する保健室
「なんだぁ、よかったぁ……」
 私はホッとして京ちゃんの胸に倒れ込む。
「まさかそれで怒ってた?」
「……悪い?」
「いや、その……ごめん。言えば良かったな」
「いやいや、だって私京ちゃんの彼女でもないし」
 私は思わずそんなことを言ってしまった。
 やらかした。
 これだと私が京ちゃんと付き合いたいみたいになってしまう。いや、本当だけど。
「あー……可愛い」
「え?」
 京ちゃんがボソッと呟いた言葉を聞き返そうとしたら、また強くギュッと抱きしめられてしまう。
 苦しくなってきちゃうくらいの強さで。
「誤解が解けたようで何より。で、俺の気持ちにまだ気がつかないわけ?」
 わからない。
 そういえばなんでこんなに抱きしめられているのか。
 うーん……。
 私はいろいろ思考を巡らさていると、急に唇に何かが触れた。
「えっ?」
「俺、優希のこと好きなんだけど?」
「……っ!」
 ボッと火が噴き出すくらい熱くなった。
「だから避けられて悲しかった。でも俺……ここで優希に会いに来たり連絡取ったら迷惑かなって思って。その……あんま得意じゃねぇから、こういう駆け引き? みたいなの……」
 言い訳のようにブツブツといろいろ言葉を並べるその姿に、私は思わず笑ってしまう。
「なんだよ」
「ふふ、あははっ、京ちゃんも変わらないなーって」
「カッコ悪くて情けねぇよ」
「いや、そんなとこが好き」
 私は初めて、京ちゃんに自分の想いをぶつけた。
 そして、京ちゃんの背中に腕を回してギュッと抱きしめる。
「ありがとね、京ちゃん」
 あなたのおかげで私は強くなれた。
 殻を破って、新しい自分に生まれ変われた。
 そんな気がする。
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