あなたに恋する保健室
「あれ、おふたりともー!」
「氷室さん!?」 
 偶然、氷室さんがカフェに入店した。
 どうやらひとりの様子。
「偶然だな」
「うち、ここの近所なんで! それよりおふたりとも、妙に仲が良いですなぁ」
 氷室さんはニヤニヤとしながらわざとらしく探ってくる。
「仲良い……かな? そうかな、はは」
「やっぱり付き合ってるの?」
「えぇっ!? え、えっ、えーと……」
 否定しようにもその相手が隣にいるのではなんだか失礼だ。
 私は京ちゃんと作戦会議をしたくてチラリと隣を見る。
(どうする!? どうするの京ちゃん)
 京ちゃんはニッコリしたまま親指を上げてグッチョブのサイン。
 何が? 何がいいの!?
「あー、うーん、仲はいいよ、ほら、前にも言った通り幼馴染で、休みの日にも一緒に出かけるくらいで」
 私は当たり障りのないことをつらつらとそれっぽく聞こえるように並べて対処しようとする。
「えぇ? そうかなぁ」
 氷室さんはどうしても私たちの口から《そうです》と言ってほしいらしい。
「いや、付き合ってるよ」
「なっ……!!」
「ふむ、なるほど」
 氷室さんは口角をニッと上げて顎に指を当てて満足気に頷いた。
「言ってもいいの……!?」
 私は小声で京ちゃんに尋ねる。
「氷室にはこっちも助けられたことあるし。それに言いふらすなんてしないだろうし。な?」
 氷室さんの方を見ると、氷室さんは何やら全てを察したかのような表情で手を合わせて拝むようにしていた。
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