お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました
しばらくして、月に一度の妃たちの集いが開かれた。

広間には、淡い香が漂っている。

紅と金で飾られた屏風の前、上座には皇后様と、威厳に満ちた四賢妃の皆様が座る。

その傍らには、寵愛を受けた妃たち。

美しく結われた髪、艶やかな衣、彼女たちは自信に満ちた目で並んでいた。

そして私たち——寵愛を受けていない妃は、部屋の下手、床の上に静かに膝をつく。

座布団すらなく、ただ冷たい板の上に。

ひとつ下の侍女よりは“上”、けれど妃の名を持っていても、**“誰にも選ばれていない女”**であることに変わりはない。

「今月も、健やかに過ごしましょう」

皇后様の静かな声が、広間に響いた。

「ははっ」

返事が重なる。私も遅れぬように頭を下げる。

集いは滞りなく終わり、妃たちが立ち上がり始めた頃だった。

「――翠蘭。」
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