お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました
その言葉を吐いた瞬間、堰を切ったように、彼への想いが溢れた。

「ふぅ……」

角度を変え、何度も、何度も唇を合わせる。

まるで失っていた時間を取り戻すように。

「ならば、俺と共にあれ。」

景文が、再び手を差し出した。

今度は、迷わずその手を取る。

強く、しっかりと――もう誰にも奪われないように。

「皇帝陛下、夜伽を奪われるのはこれが二度目ですね。」

私の言葉に、景文が笑った。

「何度だって奪ってやる。さらう相手が、翠蘭だったらな。」

その瞳に映るのは、私一人だけだった。

今この瞬間、私はようやく、自分の意志で愛を選んだのだ。
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