お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました
「どうか私を……景文殿の妻として、お認めください!」

廊下には、しんとした静寂が流れる。

数秒、それとも永遠にすら思えるほどの時間が経ったあと。

「えっ……」

王景殿の声が、低く震えた。

彼は視線を、傍らに控える景文へと向けた。

「……景文殿。これは……そなたの、願いなのだろうか?」

景文は黙ってうなずいた。

「はい、父上。俺は――この方を、人生の伴侶にしたいと思っています。」

静かな決意のこもった声だった。

何の虚飾もない、まっすぐな想い。

王景殿はしばらく二人を交互に見つめていたが、やがて溜め息のような笑みを浮かべた。

「……ああ。景文殿、おなたは変わりましたな。」

「……?」

「昔のあなたなら、己の立場と責任だけを考え、黙って身を引いていたでしょう。」

王景殿は私に向き直り、そっと膝をついた。
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