お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました

第7章 罪と罰と抱擁と

ところが――それから数日が経ったある午後のこと。

ふたたび王景殿が景文の屋敷を訪れた。

私は廊下の奥でその気配に気づき、慌てて身支度を整える。

初めて、きちんと顔を合わせる機会だった。

私は一礼し、膝をついて頭を下げた。

「……初めまして。翠蘭と申します。景文殿に多くのご恩をいただいております。」

王景殿は、しばし私を見つめていた。

その眼差しには――驚きと、どこか遠い哀しみのようなものが浮かんでいる。

「これはおやめください。陛下のお妃様が、私のような者に頭など……お下げになるべきではありません。」

その優しい声が、かえって胸に突き刺さった。

私は顔を上げなかった。

「いえ……私は、陛下の妃ではありますが、心は……景文様の妻です。」

王景殿がわずかに目を見張ったのが分かった。

「お父上殿……」

そう呼びかけて、私はさらに深く頭を垂れた。
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