お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました
皇帝の子を授かった、それだけで“身分”が上がるこの世界。

たった一度でも、“当たり”を引けば、後宮の頂点に近づける。

私には、その機会すら与えられていない。

「……私からも、皇帝に言っておくわ。」

そう言って臨光様は、背を向けた。

軽やかな衣の裾が揺れて、消えていく。

あの背中を、かつて“隣で笑っていた臨光”と重ねるには、少しだけ時間が必要だった。

しばらくして、ようやく灯油代が支給された。

「今夜から、灯りがともります」

侍女の言葉に、小さく頷いた。

久しぶりに灯った寝所の明かりは、思った以上にまぶしくて、

私はしばらく目を細めていた。

蝋燭の火が、壁に揺れる。

その明かりをぼんやり眺めていた時——

ふと、誰かの足音が廊下に響いた。

気配に気づき、屏風の隙間からそっと覗く。

そこには、皇帝陛下のお姿があった。
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