お飾りの妃をやめたら、文官様の溺愛が始まりました
「ふふふ。なんだか照れてらっしゃるようにも見えますが。」

「照れてなどいない。」

「でも、耳が赤い。」

「……うるさい。」

景文は顔を背けたまま、苦笑して肩を揺らす。

その背に、私は頬を寄せた。

その背に、私は頬を寄せた。

「本当によかったのですか?第四皇子になって。」

静かにそう問いかけると、景文は振り向きもせず、私の手に自分の手を重ねた。

その掌は温かくて、力強い。

「そなたを得るためだ。後悔などしていない。」

ぽつりと、けれど確かな覚悟を込めて、彼は言った。

その言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなる。

――この人は、本当に私のためにすべてを差し出してくれた。

もしかしたら、陛下のご子息であると名乗らずとも、文部大臣として立派に生きていけたかもしれない。

それでも彼は、私のために、自らの出自をさらし、父にひざまずき、皇子としての人生を選んだ。
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