姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.33 怒りの理由
午後のHRが終わる頃には私と榛名聖のキス(捏造)が拡散されたようで、教室は私を中心に静かにざわめいていた。
広瀬真は何か言いたそうにこっちを向いたりそっぽ向いたりを繰り返している。
だけど私はまだ怒っているから無視。
作戦通りに動揺するモブたちに満足して心の中で頷きながら、すまし顔で帰り支度を済ませて私は教室を後にした。
***
校舎を出ようとした時、近江涼介とバッタリ出くわした。
近江涼介が目指すであろう駅と私の家は方向が真逆。
だから「じゃあね。」と別れようとしたのに――
何故か私たちは並んで歩いている。
「何か用?それとも迷子?駅なら逆方向だけど。」
会話もなしについてくるから、その不気味さについに話しかけてしまった。
近江涼介はいつも通りの無表情。
こっちを見もしないから、今は感情がわからないロボットモードだ。
「別に?図書館寄りたいだけだけど。」
淡々とした返答。何と返せばいいのやら。
「……あっそ。」
そしてまた沈黙。近江涼介との会話ってどうすればいいかわからない。
生温くて不快な夏の風が、狭い路地を通り抜けていく。
「……お前、急に俺が誰かに殴られたらどうする?」
「はぁ?」
唐突なもしも話に思わず大きな声が出た。