姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

「ひどいなぁ。ひーちゃんのことはちゃんと友達だと思ってるよ〜?」


榛名聖は身を屈めて、私の顔を下から間近に覗き込む。

男なのに華奢で色を感じる指先が、クッと私の顎を掴んだ。


――傍目にはキスしてるように見えているのかもしれない。


周りの奴らが息を呑む音が聞こえる。
女共の視線はナイフのよう。


お互いの鼻先が掠れ合った時、甘いのに清涼感のある香りを察知する。

見下ろした榛名聖の微笑みは珍しく彼の噂と合致する妖艶さを感じる。


低く静かに囁いた言葉が、その色気を助長させた。


「不器用に足掻いちゃうところも面白くて好きだし。」



見つめ合い。しばらく沈黙の時間が流れる。


心の中で30秒くらい経ったかというところで、榛名聖の肩を軽く押して自分は顔を逸らして顔同士の距離を離した。


「さっ、これでH2Oを全員落としたことはアピールできたでしょ。
見なさい、あの女どもの悔しそうな顔!

アンタたちが嫌がらせすればするだけ、私はこいつらと仲良くなるのよ〜!」

小指を立てた掌を口の横に当てて、お嬢様みたいな高笑いをする。

榛名聖は「すごい、何事もなかったかのように。」と笑った。
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