姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
***
数日前の旧校舎。某時間。
もう説明するまでもないいつものお茶タイムは、榛名聖の提案から始まった。
「クリスマスにさ、別荘に遊びに来ない~?ウチの。」
「別荘ぅ!?」
当たり前のように出てきた当たり前でないワードに私だけが素っ頓狂な声を出した。
広瀬真は「へー、どこの?」とか普通に会話を進めるし、近江涼介も平然としているから、ここにいると自分の常識がおかしいんじゃないかと感覚がバグる。
「は、榛名聖……あんたってまさか……?」
ワナワナと震える指でヘラヘラしている男を指差す。
相も変わらずクラゲみたいな軽さの笑顔だ。
「うん。お金持ちのお坊ちゃまだよ〜⭐︎
……言ってなかったっけ?」
ええええええ!?
いきなりハンマーで殴りつけられたみたいな衝撃に、目を見開いて固まる。
広瀬真が呆れた様に口を開いた。
「それも知らないのかよ……。
入学した時から死ぬほど騒がれてただろ。
HARUNAの御曹司が入ってきたって。」
「真とセットで大騒ぎだったな。」
知らない。興味ない。
“HARUNA”って家電とか作ってる大企業じゃん……。
やっぱりイケメン=お金持ちの構図はお決まりなんだ。
近江涼介もきっとどこかの貴族に違いない。
コイツらとっては“別荘”なんて、“ハナクソ”と同じくらいの頻出ワードってわけね。
「いや、なんでそこでハナクソだよ。きったねぇな。」
「ひーちゃん日常的にハナクソって言ってるってこと~?お下品~。」
久々の脳内ツッコミはもうスルーする。
奴らが金持ちだろうがド貧乏だろうが、別に私に関係ないし。
――そんなことよりクリスマス!その時はもう冬休み!
何の予定もなくちょろっと、しかも偶然近江涼介に会っただけの悲しい夏休みを思い出して歓喜に震える。
冬休みは、ひとりじゃない!
ガッツポーズした両手を思い切り天に突き出して、ひとり大きくジャンプした。